会長 挨拶


柴田 晃 (立命館大学客員教授)

 

 


 日本炭化学会は、平成14年(2002年)東京大学農学部の講義室で行った木材炭化研究会を経て、その翌年の平成15年(2003年)、現名誉会長である谷田貝光克先生、今村祐嗣先生を筆頭に、バイオマス炭化に関係する多くの方々によって立ち上げられました。そのため、本学会は国内外の炭化関連研究者、製炭・流通業者、学生、各種企業・団体、一般消費者、行政関係者など幅広い層の方々のご協力・ご支援によって今日に至っております。会員の方々はもちろんのこと関係者の皆様からの日々のご協力・ご支援に対して、心よりの感謝を述べさせていただきたいと存じます。
本学会の研究範囲はバイオマス炭化全般に関する基礎研究および応用・実用化研究ですが、その特徴として、単に自然科学的なアプローチのみならず、経済・社会学的な市場アプローチも含みます。つまり、実際のマーケットにおける具体的かつ実践的な応用技術・適応技術を幅広く視野に入れた学会です。そのため国内外を問わず、バイオマス資源の炭化生成物の特性やその用途開発・有効利用に関する多くの情報の集積及び発信を行ってまいりました。

2015年12月フランス・パリで開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において、 京都議定書に代わる温室効果ガス削減のための新たな国際的枠組みとして、パリ協定が採択されました。それに伴い、日本を含む多くの国々で地球温暖化ガス削減の動きが活発になってきています。日本においては、環境省の主導のもと、バイオ炭の活用による吸収源検討会が2017年7月より開催されています。 また、2019年5月京都で開催されたIPCC(国際的な専門家による気候変動に関する政府間パネル)において、バイオ炭による農地への炭素貯留が二酸化炭素削減技術として正式に採用されました。
このような状況のもと、本学会においてはバイオ炭の土壌炭素貯留による二酸化炭素削減手法に関する研究も大きな柱の一つにしたいと考えております。つまり、バイオ炭の農地炭素貯留を通じて、地域自然環境保全と農地保全による食料確保を念頭に置いた、持続可能な社会を目指す研究です。これら研究及び研究成果の社会実装には、単に研究者のみならずバイオマス炭化に関係する多くの関係者の方々の参加・協力が求められます。つまり、研究成果の情報集積・発信活動、社会実装活動とその現場サポート活動です。
本学会は、バイオマス熱分解関連の智の集約・発信拠点として、また持続可能な地球環境を考えるバイオマス資源の有効活用の拠点となるよう、日々努力してまいりたいと存じます。そのため、本学会に、いろいろな方々に気軽にご入会いただき、いろいろな立場からのご意見をいただきたいと考えております。今後とも、皆様のより一層のご支援ご協力をお願い申し上げます。


令和元年(2019年)6月